激情ハードコアと不能の俺

最近激情ハードコアバンドを始めた。人生で初めてのバンドだ。俺はピンボーカルをやる。envyやsaetiaやorchidみたいなかっこいいスクリームもパフォーマンスもできないけど無様に生き恥晒したい。

と言っても上手くやってけるかわからない。空中分解するんじゃないかとか俺が無能すぎて見放されるんじゃないかとかそういう不安がつねにある。
なんたって俺自身は一切曲を書けない。出来上がった曲に合わせて歌詞書いて絶叫するだけで、あとは他のメンバーにほぼ任せっきり。バンドサークルみたいなものもろくにやってこなかったから機材のセッティングとかそういうのも全然わからん。社会性/協調性/その他諸々も皆無だからメンバーと上手くやれる自信もない。俺は大学で友達がいないんだ。なんとかしてくれ。

ああ、でもメインでアイデア出したり曲作ってくれてる人はマジですごくて、日本の激情ハードコアの界隈でたぶんそれなりに有名?な人だったりする。ていうか俺の大好きな、マジで大好きなバンドをやってる人だ。ツイッターで繋がってたとは言えよく俺なんかに声かけてくれたと思う。これ、バンプファンが藤原基央に声かけられてバンドやるようなもんです。いやどうだろう……。

そんなことよりなぜ急にバンドを始めようと思ったのか、なぜ突発的にツイッターメン募したのかを正直に記しておこうと思う。

今月はじめに彼女に振られた。元から関係はギクシャクしててこれもういつ振られてもおかしくないなとは思っていたがとうとう決壊、という感じで。
前からそうだが俺は失恋するとガチで鬱病になる。なんもできなくなる。飯も喉を通らん、大学の課題とか一切できん。酒量ばかり増えまくる。ベッドから動けん!!!!!!みんなこんなもん?恋愛経験豊富な友達とかいねえからわかんねえや(当たり前の事実だが俺も全然豊富じゃない、イキリとか思わんでほしい頼むから)。
今回の失恋はかなり酷いものだった、酷いというか悲惨だった。色々と。詳細は書かないがよく精神崩壊しなかったなと我ながら思う。体重は二か月前から十キロ近く落ちたけど。たぶんそういう諸々もあって今月前半はずっと風邪を引いていた。微熱が続いて頭重くて大変だった。おかげでバイトも全然行けてなくて金がない。ふざけんなよ。

なんでこんなに苦しむのか?
俺の考えだが世界には恋愛ベースの人と性愛ベースの人がいて、前者はセカイ系的な(新海誠の映画みたいな)永遠のロマンティックラブを追い求める、後者はもっとドライに男女の関係を性的なゲームと見なす。俺は完全に、というか百パーセント前者だから一度恋愛状態に陥るとその相手のことしか見えなくなる。その他の思考が消滅する。ってことはないがキミとボクの絶対的な二者関係(それは無論原理的にありえない)を夢想する。それゆえ関係が壊れたとき大ダメージを食らうことになる。ずっとゼロのままなのと百がゼロになるのと、まあ比べるようなもんじゃないがどっちの方が苦しいんだろうとか考えてしまう。何より今回は先述したように経緯がかなり悲惨なのでもうどうしようもない。

そういうわけで俺は完璧に気が狂ってしまった。そこで俺は思った。バンドやるしかねえと。

誤解しないでほしいが昔からずっとエモ/激情ハードコアバンドはやりたいと思っていた。ツイッターその他でメン募したこともある。そのとき集まってたらやってたと思う、誰一人集まらんかったからできなかっただけで。
今回は幸いにも声かけてくれた人がいて、そこから芋づる式に(?)メンバーが集まったので始めることができた、それだけだ。

これメンバーに読まれたら普通に嫌われるかもな。なんだこんな奴だったか、これにて終了!となるかもしれない。嘘がつけない性格ってやだね。




何回かツイッターにも書いたが90年代のエモや激情ハードコア、skramzは俺が唯一実存を仮託できる対象である。ここ数年気が狂いそうなときいつもenvyを聴いてた気がする。Indian SummerのAngry Sonとか。マジでずっと聴いていた。今もずっと聴いてる。ベッドで独りで天井見つめてずっと。

これも俺の自説ではあるのだが、エモや激情ハードコアというのは本質的に成熟しえない、大人になれない人の音楽なのだと思う。俺は昔から「この世界に向いてない」とか「人として未成熟」とか「まともな人間になれ」とかずっと言われてきた。自覚もしている、俺は本当に何もできないから。最低限の人付き合いもできないし人生経験が年齢に見合ってない。マジで終わってると思う。恋愛できたくせにそんなこと言うなとか言わないでほしい。欠如と不全の感覚は時折不意に押し寄せる。そのたび俺はすべてを棄てて足元を見つめるしかなかった。
もちろんエモや激情ハードコアが好きな人たちがみんな俺みたいな「まだ人間じゃない」ナニモノかであるなんて言わない(実際そうじゃないからライブとか行って最悪な気分になることがしょっちゅうある)。ここで言ってるのはあくまでも「俺にとっての」激情ハードコアであるということを忘れないでほしい。お前らにとっての激情とかどうだっていい。

俺はかつてエモ、激情、skramzをオタクの音楽だと言ったことがある。オタクとは諸々の批評が言うように近代社会の規範に照らして見たとき未成熟な文化であり存在である。とやはり俺は思う(それに対するオタクサイドからのどうでもいい反発は無視する)。現代においても十九世紀あたりから整備されてきた諸々の文化的、社会的な規範はゾンビのように残存し続けている。芥川賞は偉いし定期的に選挙やるし資本主義は終わらない。そういう近代社会において教養とか労働とかによって人格を陶冶し成熟することで人は初めて市民として一人前の人間となるというのがヘーゲルが言ったことらしい。そんな中で成熟しえない奴はこの近代市民社会では人間未満の存在である。人と話せない、飲み会とか行けない、仕事もなんもできない、そうなったらもう激情ハードコア聴いて哭くしかない。己の不能性に直面してそれでも何もできずに立ちすくむしかない。




俺はマジで何もかも嫌いなんだよ、この世界の何もかもが。全部気に食わない。馬鹿で低能で趣味悪いどうでもいい糞どもが無限に存在することが。
自分の好きなものを人と共有するということも俺にはできない。音楽について語れる友達はいる、けどそいつとも本質的なところではまったく噛み合わないし噛み合わせようとも思わない。俺は同一性よりも差異を見いだしてしまう人間なんだろう。俺とは差異がある人間、つまりこの世界における俺以外のすべての人間が俺は嫌いだ。キモいんだよ。